書店員Nの命削ってオススメします! 『ラノベ神殿!』SP(1)
たまにはラノベも命削ってオススメします! 第1回『ミスマルカ興国物語』
北に人魔平等のゼピルム共和国。南に魔人至上主義のグランマーセナル帝国。二つの強大国家に挟まれた中原と呼ばれる場所、小国家群に都市より小さな小国があった。後に大陸全土を震撼させたその国はミスマルカ。今はただ、人々が安穏と暮らすだけの小さな小さな国である―
ミスマルカ興国物語は英雄譚です。
たとえそれがぐーたらでスケベで腰抜けの、ついでに小心者で嘘つきで放蕩者でサバ缶に醤油をぶちまけたごはんが好物の貧乏臭いメイドマニアで、えーとあと家臣の着替えものぞいてたな、これもうホントどーしようもなくない?
だがふだんボンクラだったり昼行灯だったり只のスケベだったりする主人公が、危機に際して立ち上がり、目を見張るような活躍をするのはヒーロー物の王道中の王道。
わずか15歳のミスマルカ王国第一王太子マヒルもその分に漏れず、父王不在の中での帝国の襲撃という絶体絶命の状況下で、隠れた能力の片鱗を見せ始めます。
いきあたりばったりに適当な思いつきでやってるかに見えた様々な行動が、帝国の侵攻軍に対する周到に張り巡らされた罠だったことが明らかになるにつれ、読み手のカタルシスに対する期待(そう、それは水戸黄門の印籠や遠山の金さんの桜吹雪と同様の)は強まっていきます。
が、スレた小説読みの予定調和の物語への満足感もここまででした。
逆転するはずが逆転しない逆転劇。まったくもって唐突な第三勢力の登場。
そして本来物語のクライマックスともいうべき、主従の別離をすらあざ笑うかのようなマヒル王子の態度。
正直侮ってました。ここでこういう展開ならこんなオチかな的枠を、勝手に作って勝手にはめてました。
マヒル王子の悪辣さと凄みは、そんな半可通の思惑をはるかに超えていました。
こいつ悪い。ホントとんでもなく悪い。
まさに前原圭一を凌駕する『口先の魔術師』っぷりです。
どたんば中のどたんばになってからの畳み掛けるような展開の速さに、半ば呆然としながらページをめくる手が止まりません。
久々に、本当に久々に小説を読む真のカタルシスを味わいました。
ですが、真の衝撃はその直後に待っていたのです。
作者のあとがきという真のクライマックスが…
もしこの小説を読んで次巻以降に多大なる期待を寄せた方は、あとがきを読まずに本を閉じることをお勧めします。
もしうっかり読んでしまった人は、共に祈りましょう。このへそ曲がりで大法螺吹きでハッタリ好きで、でもとても正直な作者に次も神が降りてくることを。
もう、大風呂敷広げたまま書き逃げとかだけは許さないんだからねっ!(ツンデレ風に)

- タイトル
- ミスマルカ興国物語 (1)
- 著者
- 林 トモアキ
- 発行
- 角川書店
- 発売日
- 2008-02-01
- 価格
- ¥ 580(税込)


















