ヤンデレコンクール優秀作品発表
はいどうも、今回ヤンデレコンクールの選考を担当しました書店員Nです。
ヤンデレといえばNだろうということで選ばれました。
いいですよね、ヤンデレ。迫られてる時に、女の子に抱きつかれてるからドキドキしてるのか、後ろ手に持った包丁にドキドキしてるのかわからなくなる感じとかがいいです。
私は女の子に抱きつかれたこと自体人生においてないんですが。
さて、作文部門応募総数9作品、イラスト部門3作品と、数的には少なめですが、おかげさまでなかなかに珠玉の作品群が集まりました。応募して頂いた方々には感謝感謝です。
最初の方なんか一通も来なくて企画自体がポシャりそうになりましたから。
また似たような企画をスキあらば行いたいと思ってますので、今回選に洩れた方も次回ぜひともまた応募してみて下さい。
それでは以下各部門の最優秀作品発表です。
作文部門
憧れのヤンデレ
「あたし、ヤンデレになる!!」
憧れの先輩のハートを射止めるためにヤンデレになることを、親友のKちゃんに宣言したのが二ヶ月前の五月のこと。
四月に入学したあたしは、部活紹介で見かけた先輩に一目ぼれ。しかし、先輩はとても素敵な人であったため、恋のライバルがたくさんいました(みんな美人)。
自慢ではないのですが、あたしはいたって平凡な、ごく普通の女の子。勝ち目の無さに落ち込んでいたときに、あたしは出会ったのです。
そう、“ヤンデレ”と。
世間でのイメージでは恐い人たちであるヤンデレも、あたしにとっては素敵な、恋に生きる人に見えました。
なので、そんな素敵なヤンデレになりたいことをKちゃんに宣言したとき、
「ヤンデレなんて、人を殺しちゃうくらい恐い人のことをいうんだよ? だめだよそんな人になったら!!」
と、言われたので、
「確かに人を殺すのはやりすぎだと思うけど、あたしのなりたいヤンデレは、一途に好きな人のことを想い続ける、素敵な人のことなんだ」
と、自分にとってのヤンデレを説明し、なんとか納得してもらいました。先輩のことが好きだと言うたびに、Kちゃんはどこか複雑な表情をしていましたが、あたしに協力してくれることになりました。
このときのあたしには、頑張るという気合と、未来への希望しか見えていませんでした。
§
一ヶ月前。
ヤンデレについての研究を終えたあたしは、遂に行動に移しました。
時は放課後。部活の準備をしつつ、先輩の姿を探します。ほどなくして、女子の先輩3~4人くらいに囲まれつつ部活の準備をしている先輩の姿を発見しました。
さぁ、ここからがあたしの戦いです。さっそくKちゃんに見てもらったあたしの技を使ってみます。
あたしは、先輩に近づき、
「先輩、その道具運ぶの手伝いますよ」
にこやかな笑顔を先輩に向けつつ、半ば強引に道具を持ちます。すると、予想通り女子の先輩達からの非難が始まりました。
「ちょっと、あたし達が手伝うから、一年生はあっちを手伝ってきなさいよ」
軽く睨みをきかせ、先輩オーラを漂わせながらあたしに言ってきました。すかさずあたしは、
「いえ、先輩方に手伝わせるわけにはいきません。雑用は一年生の仕事ですから」
笑顔で返します。あくまでも口では筋の通ったことを言い、一方、笑顔には「あたしが先輩の手伝いをするんだから、あんたらはどっかいきなさいよ」という負のオーラ(殺気ともいう)を込めます。
すると、どうでしょう。あたしの妙な迫力を伴った笑顔に怯んだ女子の先輩達は、
「そ、そう。なら、頼んだわよ」
と、若干悔しそうにしながらも退場していきます。計画通り!この勢いのまま、先輩に猛烈アタックです!
「じゃあ、先輩。行きましょうか」
先ほどとは違い、「先輩のお手伝いが出来るなんて、とっても嬉しい!!」という、喜びに満ちた正のエネルギー(ラブオーラともいう)を込めた笑顔を先輩に向けるのです。そして、おそらく先輩は「ありがとう、じゃあ行こうか」などと言いながら道具を華麗に持ち上げて、颯爽と歩き始めるはずです。そしたら、その次に――――
「ありがとう、じゃあ行こうか」
―――――――――――――――――――――あっ、いけない。ついつい気絶しそうになってしまいました。だってだって、予想通りのセリフだったのに、先輩は、先輩はっ! とっても素敵な笑顔をあたしに向けて来るんだもん!! これは予想外です! まさか先輩の笑顔にここまでの破壊力があったとは!
一気に頭が真っ白になってしまったあたしは、先輩の言葉に対し、
「は、はい……」
としか言えなかったのです! しかも顔を俯きながら! なにやってんですか、あたしは!
これじゃあ、せっかく女子の先輩方を追っ払った意味が無いじゃないですか!
そして、先輩の笑顔にやられたあたしは、笑顔を見たらもうどうでもいいやと思い始めたせいで、このあと先輩との距離を縮めるような会話をすることができませんでした。
今思い出しても、この失敗はとっても恥ずかしいです。このあと、Kちゃんに泣きついたのをよく覚えています。
Kちゃんは頭のいい子でしたから、すぐにアドバイスをしてくれました。あたしはKちゃんに感謝しました。けれどそのとき、あたしはKちゃんの笑顔に違和感を覚えました。
あのとき気づけたらどれだけ良かったかと、今更ながら後悔しています。
§
二週間前。
Kちゃんのアドバイスに従って、夜も遅くまでずっと先輩の笑顔の写真を見続ける特訓をしたおかげで、先輩の笑顔を見ても、なんとか失神しないようになりました。
それがわかってからは、女子の先輩方に気を配りつつも、先輩との距離を縮めようと頑張りました。
あたしは、毎日が楽しかったです。今の自分に充足感を感じてもいました。
Kちゃんは、同じ部活だからこそ出来るフォローの数々をしてくれました。Kちゃんがいてくれて良かったと、今でも思っています。
§
一週間前。
努力の甲斐もあってか、遂に先輩とデートすることになったのです! もうその日から、毎晩興奮して、なかなか眠れませんでした。
もちろん、すぐさまKちゃんに報告しました。すると、
「おめでとう。頑張ってね」
いつものように、笑顔であたしに言ってくれました。しかし、あたしはこのKちゃんの言葉と笑顔に、また違和感を覚えていました。
しかしこのときは、違和感の正体に気づきました。
それは、冷たさ。
以前と変わらない笑顔のはずなのに、どこか冷たいのです。付き合いが長いからこそ感じ取れたのかもしれません。現に、周りの友達はだれも気づいていないようでした。
だけど、先輩とのデートのことが気がかりであったあたしは、デートが終わった後に聞けばいいやと思い、深くは考えませんでした。
このときのあたしには、先輩とのデートへの嬉しさと、Kちゃんに対する一抹の不安がありました。
§
そして、30分前まで、あたしは先輩とのデートを楽しんでいました。
とある遊園地の前で待ち合わせ。遅刻しないようにというのと、恋人気分を味わいたいという願望から、あたしは待ち合わせの二時間前から待っていました。
約束の十分前に現れた先輩。そして、お決まりの、
「ごめん。待たせちゃった?」
「いいえ。あたしも、今来たところですから」
このやり取り。まるで恋人のようだと、歓喜に打ち震えていました。
そのあとは、楽しい遊園地デート。ジェットコースターに長時間並び、マスコットキャラクターと一緒に写真を撮ったり、ちょっと高めのご飯を一緒に食べたり、お土産屋さんを見て回ったりと、楽しく遊びました。
あたしは笑顔でした。
先輩も笑顔でした。
だから、先輩も楽しんでいると思っていました。
§
そこそこ遅い時間になったため、今日はこれで帰ろうという先輩の言葉をも以ってして、遊園地デートは終了となりました。
帰り際、先輩ともっと仲良くなりたいあたしは、次のデートの約束を取り付けようとしました。
「あの、先輩……」
「ん? なに?」
「来週も……こうやって、一緒に遊んでくれませんか?」
やっぱりデートに誘うのは勇気がいるもので、あたしはかなり恥ずかしかったです。
しかし、そのかなりの勇気がいるこのデートへの誘いは、
「ごめん。来週はちょっと忙しいんだ」
敢え無く粉砕。けれど、諦めません。
「じゃあ、えっと……再来週は?」
「その次もちょっと……」
「じゃあ、いつ遊べますか!?」
またデートが出来るとは限らない。
あたしは、そんな焦りからつい語気を荒げてしまいました。
そのせいでしょう、先輩は、
「あ、その……暇になったら連絡するよ! じゃ、じゃあな!」
まるで逃げるかのように帰ってしまいました。
元々、バスで帰る先輩と、電車で帰るあたしとは帰る方角が違うから、送ってほしいとは思いませんでした。
けど、ちょっとひどいと思いました。
こんなにも先輩のことを想っているのに、それをないがしろにするあの態度。
先輩は今日、楽しんでいたようだから、あたしに好意があるはずなのに。
なのに。
デートの誘いを断るなんて。
……だったら、もっと先輩に愛情をぶつけてやる。そうすれば、誰が先輩にふさわしいか、きっとわかるはず。そしたら―――――――――
そこで、あたしの思考は一旦停止。なぜなら、携帯が鳴っていたから。
ディスプレイに映し出されるのは、Kちゃんの名前。
すぐさま電話に出たあたしは、
「今すぐ、遊園地の正門の前に来て」
その一言だけを聞きました。
すぐに電話が切れたため、Kちゃんの真意はわかりませんでしたが、あたしはすぐさま正門に向かいました。
§
Kちゃんはすぐに見つかりました。一人、どこか虚ろな様子で佇んでいます。
「Kちゃん……」
「来てくれたんだね、ありがとう。さぁ、こっちよ」
すぐさまKちゃんは歩き出します。意味がわからないながらも、とりあえず後を追いました。
そうして着いた場所は、暗がりの路地裏を抜けた先、ちょっと広めの、今は使われていない元駐車場。
「こんなところに連れ出して、何の用なの? Kちゃん」
当然の疑問。しかしKちゃんの答えは、予想だにしなかったものでした。
「今日、私もあの遊園地にいたの」
「……えっ?」
「そして、ずっと二人のデートを見てたわ。最初から、最後まで」
「…………えっ、ちょ、ちょっとまって」
意味がわかりません。なんで、Kちゃんがそんなこと……?
そんな疑問も、次のKちゃんの言葉で解決されました。
「それが、先輩に頼まれたことだから」
最悪の形で。
「前から相談されてたの。あなたが不気味だって。でも、女の子とデートもしてみたいから、一回デートして、それで危ないやつだと判断したら、私に任せるって」
瞬間、いくつもの疑問が浮かびました。前っていつから? 不気味って、なにが? 危ないやつって、どういうこと? …………Kちゃんに任せるって、どういう意味?
「私は、あなたのことが好き」
パニックになった頭に、響く言葉。
「だけど、先輩のことも大好きだった」
衝撃が、襲い掛かる。
「だから、あなたと先輩が付き合うなら、私は諦めるつもりだった。だって、あなたのことも大切だから。……でも、ヤンデレになったあなたと接することが、先輩にとっては辛いことだったみたい。それこそ、だんだん病んでいくように」
「そんな……」
「先輩は言っていたわ。 “女の子に好意を持ってもらって嬉しいけど、あいつはなんだか怖い”って。悩んでたんでしょうね。女の子とも付き合いたいけど、それがあなたみたいなヤンデレでいいのかって」
「そんなの……そんなの、嘘よ……」
「そして先輩は、あなたの親友である私に相談した。だから私は先輩に言ってあげたわ。先輩がもう無理だと思ったら、私に任せてくださいってね。すぐに先輩は私に頼んだわ。危ないと思ったら、私に任せるって」
そんなの……信じられない……
「それが一週間前。そしてデート中にメールが来たわ。 “もう無理だ”って。だからあたしは―――――――――」
Kちゃんは、あたしに対する、決定的な一言を、
「あなたを殺すわ」
狂気に歪んだ笑顔で言いました。
§
それがあたしの現状。現実逃避の回想も終わり、目の前には、Kちゃんの包丁が迫っています。
漫画とかだったら、ここでこの包丁を回避して、血みどろの争いになると思います。しかし、現実は甘くありません。
あっけなく、あたしはKちゃんに刺されました。
お腹にある、冷たい違和感。それが、胸へとせり上がって来ました。
急速に失われていく意識の中、あたしは見ました。
返り血で狂気の笑顔を彩った、一人のヤンデレの姿を。
§
電話を掛ける。もちろん、相手はあの人。
「もしもし、先輩。すべて終わりました。もう、先輩を惑わすあの子はいなくなりましたよ。だから安心してください。……これからも、ずっと、ずっと、ずぅぅぅっっと、先輩のことを守りますからね」
電話を切る。先輩は泣きながら何かわめいていたが、きっと私に対する感謝だろう。
やり遂げた満足感のなか、私は、先輩にまとわりついていた一人の女の処分を開始する。
この元駐車場には誰も来ない。だから、人を燃やしても平気。
燃え盛る炎を眺めながら、私は静かに笑いました。
その頬に、涙を光らせながら。
寸評
冒頭の「あたし、ヤンデレになる!!」に相当やられました。なんかじわじわ来ます。
ネタ的にはありがちといえばありがちですが、オーソドックスな物語をきっちりと読ませるというのは大事なことです。最初から最後まで破綻せずにちゃんと書ききっていて、好感が持てました。女の子のちょっと足りないバカっぽさも、個人的にはポイント高いです。
イラスト部門
寸評
本来はそこにあるべきではない異物が日常に紛れ込むことで、恐怖が演出されるわけです。道路にたたずむ血まみれの女の子とか、教室で女性徒なぜか持っている包丁とか。そういった意味で学校におけるハサミは決して異物ではないはずですが…この絵は怖さを感じます。得体の知れない湧き上がる不安。ヤンデレイラストとして一番大事な部分です。
- 優秀作品へ送られるサイン本は10月後半の発送を予定しております。準備が出来次第また別途該当される方にご連絡させて頂きます。
























